搭乗の際のクルーからの挨拶のとき、小声で「ご相談したいことがありますので」と。妻にはトイレへ立つふりをして、ギャレーへ。もちろんカーテンは閉めてある。
ご相談、である。このフライトで、結婚5周年の感謝と、インド生活への苦労に多少なりとも報いるために、妻に指輪を贈ろうと計画。事前にANAへ連絡を取っていたのだ(往路でも対応してもらったのは、予想外の喜びだった)。
ごにょごにょごにょごにょ。では、このような感じで。はい、どうぞよろしくお願いします。お忙しいところすみません。
で、無事離陸し、水平飛行に。
運ばれてきたアミューズのトレー、可愛く飾られており、その上にはリボンのついた箱と、メッセージカード。普段でも丸い妻の目が、さらに丸くなる。
結婚・婚約指輪と同じお店のものなので、リボンに入った店名で即座に指輪だと分かったようだ。
シャンパンで乾杯。クルーが集まって「おめでとうございます」と。
妻、大喜び。
よかった、よかった。ご協力、ありがとうございました、ANAの皆様(もちろん、彼女たちの仕事のメインは乗客の安全確保であるので、気流も安定し、業務に余裕があればというのが大前提であった)。
ミッションコンプリートである。しかし、渡すこちらも終始ドキドキしっぱなしであった。
インド上空にさしかかったが、ここからデリーまでまだ3時間ばかりある。
さあ、また、インドがんばろー。
ところで、後日談。
妻がこのサプライズについて、自分の親に報告しているメッセージを見せてもらった。義理の息子(僕)の評価が上がるのは喜ばしい限りなのだが、どうにも疑問が残る文面だった。
娘「5年も結婚生活、我慢してくれてるお礼にって、指輪もろてーん(写真つき)」
母「おお、よかったやん。親戚にも自慢の旦那さんやな。せやけど、来年はもっと大きな石のヤツをもらうんやで」
娘「次は10周年まで望まれへんなー」
突っ込みどころ、満載である。