妻が大はしゃぎ。「こういう雰囲気のとこ、めっちゃ好き!」
よかった。僕も好き。情緒あってよい。
焼き鳥、もつ焼きなど、赤提灯の軒先が並ぶ、素晴らしい感じに雑然とした飲み屋が大集合。
ここ、昔「しょんべん横町」って呼んでなかったか? でもって、10年ほど前に火事にあったような。おぼろげな記憶。
この後、友達と食事の約束をしているので、焼き鳥、もつ焼き屋に腰を据えたい誘惑を振り切り、いい具合に見かけたバーに入って食前酒と洒落込む。
「目についたバーに入る」(そこには選択眼が要求されるし、賭にも似た思い切りがいるし、結果を引き受ける用意と度胸まで準備されていないといけない)、「何かしらの酒を頼む(ゴビ砂漠で目的の礫を探すよりは易いが、マクドナルドでメニューを選択するよりは難い)」というのは、大人のスキルの重要な二つだと思う。
木製の、ベンチのような長椅子が置かれたカウンター。先客の後ろを通るとき、気を使うくらいの狭さ。クリスマスツリーが飾られていたり、アンティークだか単なる古物だかのシャンデリアが光っていたり、熊野神社のお札が貼られていたり、素敵にカオス。
空きっ腹だし、これからガツンと飲む予定なので、僕は大人しくカシスソーダなぞちびちび。妻はハイテンションのまま、いきなりギムレットを飲み、この店のオリジナルカクテルにさらにはしゃいでグラスにキスを捧げていた。
バーテンダーの後ろの壁の一角に世界各国の紙幣が貼られていて、妻が20バーツ札を取り出し「よかったら」と。
バーテンダーが「何かメッセージを書きませんか」
暗がりでよく分からなかったが、妻は何かしら書いていた。
さ、そろそろ待ち合わせの時刻。行きますか!
(次、新宿来たらここへ来よう。あるいは、百人町も久々に訪れたいが、あそこでアジア料理を食うよりは、今の僕の状況からすると、こちらだな)