妻から「王女様がインドに来られるので、歓迎式典に一緒に行く?」と誘われていた。タイ王国、プーミポンアドゥンラヤデート(ラーマ9世)国王の三女、チュラポーン王女。
おもしろそうだし、久々にタイに触れるのも楽しそうなので、普段よりは一段階上の格好をして向かう。
会場はタイ大使公邸。
参加しているタイ人の輪の中で、妻の知り合いが増えるのも有り難い。話をしていて、実はうちのすごく近所だと言う人もいた。
穏やかな初老の男性はWHOに勤務していて、以前は北朝鮮にも住んでいたそうだ。「デリーの方が住むにはキツイね」と。
大使からの歓迎スピーチで知ったのだが、在インドのタイ人は全土でおよそ3,000人。1,800人が学生、300人が僧侶。デリーにいるのは全部で300人。
王女様のプロジェクト(チュラポーン研究所やチュラポーン病院)への支援のために、ご自身が好きだとおっしゃる真珠の即売会。妻もささやかながら協力。
その後しばらくお話が。これが、予想以上におもしろい。そして、聞きやすい。王族用語満載で、決まりきった原稿に基づくのだろうと思っていたら、大間違い。所々に笑えるポイントを差し挟み、ゆっくりと平易に語られていく、
「洪水の際、なぜ微笑んでいられるのだと言った人たちがいました。泣くことで洪水が引くなら、いくらでも泣いたでしょう。しかし、私が涙を落としたところで、洪水の中に落ちていくだけに過ぎません。だから私は微笑み続けることにしたのです」
「パトゥムターニーの我が家も、最高で3mまで水が達しました。あらゆる物が水没しました。水が引き始めて、私は警備してくれている軍に伝えました。私のセキュリティーのことは忘れてください。家を開放して、救護所とします。近隣の人たちがいつでも入って来て構いません。また、獣医も用意するので、具合の悪いペットの診療も行います」
「王室用語、私もよく分かりません。自身も王家の人間であるにも関わらず、です。王室のニュースを作成されている皆さんの方がよっぽど詳しいでしょう。カセサート大では、王室用語の講義は落第しました。名詞にはすべからく「プラ」を、動詞には「ソン」をつけてみたらいいのではないかと思います。『プラ・ト(御机)、プラ・ガウイー(御椅子)』、『ソン・ナン(御座る)、ソン・ドゥーン(御歩く)』という具合に」
他にも真珠の話、ガン患者支援の話、国王の現況のお話などがあった。